内科診療外科診療消化器疾患軟部外科
鼠径ヘルニア
犬や猫の鼠径(そけい)ヘルニアは、腹部の内容物が鼠径部(後肢の付け根)を通って皮下に出てくる病態です。人間にも見られる病気ですが、動物にも起こります。
<鼠径ヘルニアとは?>
鼠径管(そけいかん)という通路を通って、腹膜や腸、脂肪組織などが外に脱出する状態です。
<原因>
・先天性 特に若齢の犬や猫で多く見られます。
・外傷 強い打撲や事故によって腹圧が急上昇したとき。
・妊娠・出産 雌で腹圧が上がるため、発症リスクが上がる。
・肥満・慢性的な咳や便秘 腹圧上昇が誘因となることがあります。
<犬での発生傾向>
・小型犬種(チワワ、トイプードルなど)で多い
・雌に多く見られます(鼠径管が大きいため)
<猫での発生傾向>
・発生は犬に比べると稀ですが、外傷性(交通事故など)が多い
・雌雄ともに発生しますが、特に未避妊雌猫に注意
<症状>
・鼠径部のしこりやふくらみ
・脱出した内容物が押すと引っ込むこともある
・嘔吐・食欲不振・元気消失(腸が締め付けられた場合=嵌頓〔かんとん〕ヘルニア)
<治療法>
軽度・症状なしの場合
・経過観察(ただし注意深くモニタリングが必要)
手術(基本的な治療法)
・脱出物を腹腔内に戻し、鼠径管を縫合して閉じる
・必要に応じてメッシュなどで補強
・避妊手術と同時に行うことも多い(雌の場合)
<放置するとどうなる?>
・腸閉塞や壊死につながるリスクあり
・命にかかわる場合もあるため、嵌頓している兆候がある場合は緊急手術
↓↓手術写真があります。
術前
ヘルニア孔から脂肪が脱出しているところ
脱出した脂肪を戻したところ
ヘルニア孔が見えます↑
腹壁を縫合したところ
術式完了